「風の歌を聴け」村上春樹を紹介します。村上春樹の記念すべきデビュー作です。この本の主人公は、東京の大学に通う、文章を書くのが好きな学生です。この男性が学生から8年が経ち、20歳の最後の年を迎えた日に語りだします。彼は大学4年の夏に、地元である神戸に帰省していました。この本は、冒険とか、何かのストーリー等の物語では無く、ただ単にその帰省中の事柄を淡々と書いたものです。

文章を書くと言うことは、僕にとって楽しいばかりではないのです。いろいろなことを考え、少し苦心し、考え考え抜いて、一つの文章を書きます。「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」です。この文章を慰めに、主人公は文章を書いていきます。それでもいざ文章を書くとなると、絶望的な気分に襲われることになるのです。僕も文章を書くと言うことは、楽しいけれど少し厳しい作業であると思います。

この物語には主人公の他、鼠という友人と、左の指が4本しか無い女性が登場します。鼠とはジェイズバーというお店で、ビールを一緒に飲んだりします。ビールを一口二口飲んで、小説や金持ちの事等の話をします。そして次に女性ですが、バーで倒れていたところを介抱し、その女性の家まで送っていきます。そして別れた後に、また再会します。それから女性は、自分の生い立ちや4本しかない指の事等を主人公に語るのです。こんな風に8年前の夏にあった出来事を、淡々と語っているだけの物語ですが、主人公が思い出すその夏の出来事は、とても特別なもので色あせない物なんだなと楽しく思いました。そんな短い物語ですが、この本を紹介します。

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